寝付きや寝覚めが悪い、夜中によく目が覚める、眠りが浅いなど、中高年のビジネスパーソンにとって大敵な数々の睡眠障害。病気としての不眠症かどうかの見極めポイントは前回(睡眠研究の第一人者が説く、良い眠りの「真常識」参照)ご紹介したとおり。ただ、そうは言っても実際に寝付きが悪かったり、夜中に何度も目が覚めたりするような状況を改善したいと思っている人も多いだろう。そこで、睡眠研究の第一人者である国立精神・神経医療研究センターの三島和夫先生とともに、今回は主な睡眠障害の原因とその解決策を探る。
ベッドにしがみつくな!
最初の不眠の例は、実際に寝入るまで時間がかかるパターンだ。三島先生によれば、寝付きが悪くなる大きな原因は「眠気もないのに寝床に入る」「必要以上に寝床に長くいすぎる」ことだという。
「寝付きが悪い人は、10分でも20分でも早くベッドに入れば、それだけ睡眠時間が伸びると考えがち。ですが、これは『ベッドに横になっていても眠れない』という体験を繰り返すことになり、不眠を悪化させます。こういう人はベッドでいつも苦しい思いをしているため、寝る時間が近づくたびに『今晩もまた眠れないのでは……』と考えて脳がホットになり、ますます眠りが遠のきます。だから、そんなイヤな場所(ベッド)に長くいなければいいんです。ではどの時刻ならしっかりした眠気がくるのか、どのぐらいの時間、ベッドにいればいいのか。それを知るのに有効なのが、睡眠のリズムを調整する睡眠のスケジューリングで、欧米で非常に高い効果を出している方法です」(三島先生)
そして、夜中に何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」のパターン。要するに睡眠が細切れになって寝た気がしないという“中高年特有”の症状だが、これにも睡眠のスケジューリングが同じく有効だ。
「睡眠のスケジューリング」は起床時間を起点に、自分がベッドにいるべき時間を逆算するもので、誰でも自宅で簡単にできる。必要なのは、
・昨晩、何時に寝たか(ベッドに入ったか)
・今朝は何時頃目を覚ましたか
・寝入るまでに何分ぐらいかかったか
を毎朝記録するだけ。これを少なくとも2週間程度続けるのが望ましい。もちろん、土日も寝だめはせずに、平日と同じ就寝パターンを取ることが前提だ。
「これにより、ベッドにいる時間ではなく、自分が“正味寝ていると感じている時間”の平均値が出ます。そして、仮に5時間という数値が出たら、30分を足した5時間30分を、生活習慣病など持病がある場合には1時間を足した6時間を、毎日のベッドタイムに充てる。つまり、朝の6時に起きる必要のある人は、0時半もしくは0時にベッドに入るということ。こうしてベッドタイムを制限すると、寝入るまでの時間のばらつきがなくなってくるでしょう。これが、不眠を治す第一歩です」(三島先生)
するとやがて、0時半まで起きていられなくなり、“バタンキュー”の日が来るという。なぜなら人は、この“正味寝ていると感じている時間”を、短く見積もりがちだからだ。たとえば睡眠薬の新薬の治験などで被験者に前夜の睡眠時間を尋ねると、100人いればほぼ100人全員が、睡眠時間を短く答えるという。脳派測定では20分で寝付いているにもかかわらず「寝るまでに1時間以上かかった」という人がざらにいるのだとか。
要は「正味寝ていると感じている時間 < 実際に寝ている時間」となるため、算出した時間で睡眠を続けていると、確実に睡眠不足に陥って、やがて“バタンキュー”となるのである。そして、この“バタンキュー”の日々を繰り返すうちに、いつしか不眠症状が和らいでいくということらしい。
「自分は不眠症気味だと思っている人は、実は意外と寝ているものなんですよ」と、三島先生。この思い込みが、不眠に拍車をかけている要因の一つなのだろう。
「この方法は、短いタイムゾーンの中に睡眠を押し込め、分断された睡眠時間をぎゅっと圧縮する効果があるので、夜中にちょくちょく目が覚める人にも効果を発揮するでしょう。同じ睡眠時間でも、睡眠が分断されていた頃に比べて熟眠感が出てくるはずですよ」(三島先生)