連続テレビ小説『ちゅらさん』
沖縄の小浜島と東京を舞台に、初恋の人と運命の再会を果たし、少女のころの夢を現実にしたヒロイン。その明るくまっすぐな生き方とともに、心温まるエピソードや美しい自然を通して沖縄の魅力がたっぷりと描かれた。
クランクインもアップも沖縄ロケ
沖縄・小浜島で民宿を営む古波蔵家の長女・恵理をヒロインに描いた『ちゅらさん』。クランクインロケの初日も小浜島からスタートした。どちらを向いても一面パノラマという絶景ポイントに立つ恵理。最高の見晴らしだが、小高い丘には想像以上に強い海風が吹きつけてくる。カットとカットの合間にはスタッフが毛布を大きく広げ、自らの体をはって風よけを作り、恵理役の国仲涼子さんを守る姿が見られた。沖縄ロケの後半は、国仲さんの地元・那覇に移動して、国際通り、泊大橋、首里金城町などの名所で行われた。高校生の恵理の通学シーンは首里高校で撮影。エキストラだけでなく大勢の生徒たちが撮影の様子をひと目見ようと集まってきて、「久しぶりのセーラー服は新鮮だけど少し恥ずかしい」と、てれくさそうだった。しかし、小浜島、那覇市内ともに晴天に恵まれたクランクインロケだった。
それから9か月後、3度目の小浜島ロケが行われた。台風一過の晴天、厳しい日差しが降り注ぐなかでの過酷なロケだったが、ここで『ちゅらさん』全シーンの撮影が終了。スタッフ全員でドラマ主題歌「Best Friend」を大合唱してクランクアップとなった。
首里高校でのロケシーン
恵里は野球部のマネージャー
那覇 国際通りでのロケシーン
琉球舞踊に挑戦
恵理の特技は沖縄の伝統舞踊である琉球舞踊。しかし、国仲さん自身は実は初めての経験だった。ゆったりとした手足の動きで心の内面を表現するのだが、「最初は振りを覚えるだけで精一杯でした」とのこと。しかし、放送スタート前の番組宣伝で記者を集めて開かれた公開特訓ではすっかり上達した踊りを見せていた。指導を担当した琉球舞踊の第一人者である志田房子さんは「国仲さんのかわいらしさを損ねないように、踊りの振りや身体表現を考えました」と、温かく見守りながらの指導。琉球舞踊の集中特訓の成果は、父・恵文(堺正章)の弾く三線に合わせたり、沖縄の人々と大勢で踊るシーンなどで披露された。
沖縄出身者、大集合!
やはり沖縄が舞台とあってレギュラー、ゲスト問わず多数の沖縄出身者が出演してドラマを盛り上げた。ヒロイン恵理を演じる国仲涼子さんをはじめ、恵理の兄・恵尚をガレッジセールのゴリさん、その親友でプラスチック工場を営む島袋役に相方の川田さん。恵理がマネージャーをつとめる那覇北高校野球部のキャプテン・与那原誠はDA PUMPの宮良忍さん。宮良さんはドレッドヘアをばっさり切って撮影に臨んだ。
上京した恵理がアルバイトをする沖縄料理店「ゆがふ」の主人・兼城昌秀役の藤木勇人さんは、ドラマの沖縄ことばの指導も兼ねていた。「ゆがふ」を訪れる常連客役に、ダチョウ倶楽部のリーダー・肥後克広さん。BEGINのボーカル・比嘉栄昇さんなど。終盤にはドラマの主題歌を担当したKiroroも出演。「ゆがふ」で比嘉栄昇さんとともに沖縄民謡「てぃんさぐぬ花」を歌うという楽しいシーンもあった。
DA PUMP宮良さんは高校球児役
高校のOB役で具志堅用高さんも登場
BEGIN 比嘉栄昇さん
kiroro 玉城千春さん・金城綾乃さん
BEGINとKiroroの豪華共演!
沖縄の“おばぁ”が人気者に
恵理の祖母・古波蔵ハナを演じた平良とみさんは50数年のキャリアを持つ沖縄芝居の大スター。しかしテレビの世界は勝手が違うということで、出演依頼に迷いもあった。「これは沖縄のためになりますか?」とプロデューサーに問い、「そういうドラマにします」との約束を得て決断したという。明るく健康的で誰よりも家族思いという典型的な“沖縄のおばぁ”を好演。“おばぁ”という呼び名は一躍、全国区となった。ナレーションも担当した平良さん。舞台役者が演技をしないでセリフを言うのは違和感があるとして、ナレーション録りも身振り手振りをつけながら声を吹き込んだそうだ。
おばぁは恵里と文也に“命は宝”と説く
爆発的人気!ゴーヤーマン
恵理の兄・恵尚が金儲けをたくらんで考え出したのが沖縄みやげのゴーヤーマン人形だが、ほとんど売れず古波蔵家は大ピンチというのがドラマの設定だった。ところが、放送に登場して以降、全国から問い合わせが殺到し、ついに商品化が決定。携帯ストラップ、シール、シャープペンシル、耳かきなど、10種類以上のゴーヤーマン・グッズが続々発売され大人気となった。やがてドラマの中でも、ミュージシャンを目指す恵理の弟・恵達(山田孝之)のテレビ出演をきっかけにゴーヤーマンが売れ始めるという流れに。そこで気をよくした恵尚が、今度はゴーヤーマンハニーという女の子のキャラクターを発表するが、結局これも失敗に終わっている。
ゴーヤーマンの生みの親は、『ちゅらさん』美術スタッフの西之原豪デザイナー(当時)。デザインするにあたってゴーヤーを買って眺めたのだが、どう考えてもかわいくなるとは思えず、かなりの枚数のスケッチを描いたという。また、売れないという設定だったため、なるべくシンプルな主張しない作りを心がけたそうだ。それが予想をはるかに超える大ヒット。7月からはドラマのエンドロールにもゴーヤーマンが登場した。コーヒーカップのお風呂に入っていたり、ゴーヤー棚にぶら下がっているかと思えばアロハシャツとサングラス姿など全部で6パターン。さらにシーン中でも、「ゆがふ」の店内のクリスマスツリーに何体ものゴーヤーマンが飾り付けられた。
恵尚(ゴリ)考案のゴーヤーマン
エンディングにはさまざまな表情のゴーヤーマンが
ステラNHK名作座 コラム
沖縄と人の優しさに包まれる幸せ
沖縄県小浜島育ちの恵里(国仲涼子)は、子どものころ、島で結婚の約束をした東京の少年文也を忘れられない。単身上京した恵里は、看護師を目指す。そんな中、医師になった文也(小橋賢児)と劇的に再会。失恋、仕事、結婚、子育て、さまざまな経験が恵里を成長させていく。
沖縄出身の国仲の太陽のような明るさとおおらかさが、まさにちゅらさん(沖縄の言葉で“美しい”の意)。つらいとき彼女を包むのは、沖縄の美しい海や空、あったかい家族や友人だ。東京でもあか抜けない恵里に「いいさー、あかなんか抜けなくていいさー」と笑うのんきな父(堺正章)、風来坊の兄(ゴリ)、音楽のプロを目指す弟(山田孝之)、前向きな母(田中好子)、そして「命は宝(ぬちどぅたから)」と教えてくれるおばぁ(平良とみ)。「逃げていては幸せにはなれないよぉ。ぶつかってごらん、えりぃ」。おばぁの語りが胸に響く。
恵里が下宿する「一風館」の人々との笑える交流シーンは、どこかピントがずれた愛すべきおとなを描く岡田惠和脚本の得意技。恵里を応援しながら、自分も励まされている。このドラマには不思議な力がある。
文/ペリー荻野
- 連続テレビ小説 『ちゅらさん』 【2001年放送】
沖縄・小浜島の美しい自然の中で育ったヒロインが、個性的な人々の優しさに支えられ、命の尊さや家族の絆を胸に、のびのびと大らかに成長していく姿を描いたドラマ
脚本:岡田惠和 音楽:丸山和範 語り:平良とみ 主題歌:Kiroro