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【質問1】そもそも、IT企業や自動車メーカーが独自チップ開発に走る背景には、どのような要因があるのでしょうか?
【回答】帯に短し襷に長し

 半導体メーカーが扱うチップは、見方によっては3つに分類できる。1つ目は特定の顧客の仕様を聞いてチップを作るASIC(特定用途向け半導体集積回路)。2つ目は、多くの応用やマーケットを見据えた仕様のチップを作る汎用製品である。ここまでの2つは、半導体ビジネスの中で常に存在した。顧客の仕様を聞いてチップを作るASICは、今回設問の「独自チップ」である。そのため、最近になって急激に独自チップが増えたようにとらえられがちだが、実際には半導体チップの多くは古くから独自チップだった。ひと昔前のゲーム機にはゲーム機メーカーのロゴが刻印されたチップが立ち並び、またゲーム機メーカー自身もチップを開発していた。

 多くのトッププレーヤーが自らチップを作るようになった背景には、現状のASICの「帯に短し襷(たすき)に長し」の状態に限界を感じているからにほかならない。仕様を決めるユーザーとチップを実際に設計開発するメーカーの間には膨大な「擦り合わせ」が必要になる。何度も何度も打ち合わせをし、開発がスタートするが、必ずしもお互いの意思疎通ができているわけではない。“スイッチポン”で設計して動くチップを作ることはできても、それではチップサイズが大きくなり、極限の性能が出ないことが多い。また多くの半導体メーカーはトップ級の設計者を主力製品の担当とすることが多く、ASICの開発に精鋭部隊を振り向けることは少ない。

 ユーザーが望む極限性能をASICで実現できないとしたら、第3の分類である、「自分で作り、自分で使うチップ」に向かうことになるのは必然だ。しかしそれは今が初めてではない。新分野が生成される過渡期には、よく見られる現象である。ゲーム機では古くはASICを開発するか、自分で作り自分で使うチップが主流であった。しかし現在は汎用プロセッサーの性能が高いため、ASICや独自チップを作らなくとも性能が実現できてしまうケースもある。例えば、任天堂の「Nintendo Switch」は、米エヌビディア(NVIDIA)の「TEGRA」を採用している。

 人工知能(AI)、IoT、自動運転などの新分野が一斉に動いている現在、ASICではユーザー仕様が半導体メーカーに漏れてしまう懸念もあり、かつ所望の性能が出せない可能性も高い。汎用品では差異化ができない。過去何度も見た新分野生成期の状況と同じである。その中から、やがて新分野を網羅する汎用が生まれてくるのではないだろうか。一番の最適解は、昔も、今も、未来も「自分で作り、自分で使うチップ」であることは間違いない。