この記事は日経 xTECH登録会員限定ですが、2018年3月16日5時まではどなたでもご覧いただけます。

周りを悩ませ続ける人気者

 最後は人気者AWSの登場である。

 AWSの人気を支えるのは、ユーザーやパートナーを巻き込んだ強力なエコシステムだ。AWS活用をテーマにした日本のユーザーコミュニティ「JAWS-UG(AWS Users Group-Japan)」は、エリアやテーマごとに50程度の支部を抱え、活発な情報交換を行う。

 システムの開発・運用を支援する国内パートナーは520社以上もある。2017年だけで1430を超える機能追加や改善を行ったAWS。矢継ぎ早の投入に普通ならユーザーから文句の一つも上がりそうだが、パートナーが間に入って情報収集や活用を助けるので、そうした事態に陥らない。パートナーにとっても仕事が確保できるのだから人気が出るわけだ。

 人気者というキャラ付けは、Azureの優等生や、GCPの天才肌とは意味合いが異なる。優等生や天才肌は人気がある場合もあれば、そうではない場合もある。ところが人気者は理由にかかわらず「とにかく人気がある」という、いわばワイルドカードだ。

 AWSのサービス開発手法には、往年のマイクロソフトがやっていたSPモデルを感じる。「ライバルに先んじてさっさとリリースして、ユーザーに叩いてもらって改善する」のだ。同じようなスタイルを取ってもAWSが批判にさらされないのは、ユーザーの圧倒的な支持があるからに他ならない。あるSIベンダーの担当者は「顧客がAWSを指名してくるので、SIがどうこう言う話にならない」と打ち明ける。

 ユーザーからもパートナーからも人気を集めるAWSに弱点はあるのだろうか。実は、AWSの弱みを探るのはこれが初めてではない。

 そこに書いた内容を簡単に言えば、「ユーザーが望むサービスの提供」を第一に掲げるAWSは、パートナーの商売とかち合うような新サービスや新機能の投入も辞さない。AWSに“民業圧迫”を受けたパートナーが離れて行くだろうというシナリオだ。

 BIサービス「Amazon QuickSight」やETLサービス「AWS Glue」など、パートナーの事業領域に踏み込むサービスは増えている。「AWSリファレンスアーキテクチャー」でAWS上で構築されたシステムから導き出したノウハウを公開するなど、SIベンダーの“メシの種”にも手が伸びる。

 それでもパートナーがAWSに付いていくのはもうかるからだ。しかし最近は、景気の良い話ばかりではない。「特にインフラ系の案件は単価が安く、AWSからの紹介案件にも頼って数で稼いでいる」。あるSIベンダーの担当者はこう話す。10年間で60回以上の値下げを行ったAWSでは、ライセンスマージンも細る。

 AWSの進化もライセンスビジネスの阻害要因になり得る。例えば、サーバーレスアーキテクチャーを実現する「Amazon Lambda」。イベントをトリガーにコンテナが起動され、処理が終わればコンテナは消滅するので、必要最小限のリソースで済む。仮想マシンから乗り換えてコスト削減を図るユーザーがある一方で、SIベンダーにとっては「Lambdaはもうからない」案件の一つだ。長い目で見れば、アプリを作れないSIベンダーはAWSでもうけづらくなっていく。

 AWSが値下げを繰り返し、便利なサービスを生み出すほど、SIビジネスの実入りは減る。ただし、これがAWSの弱みかというとそうではない。AWSは、自らとユーザーで完結する世界を最終目標に掲げているからだ。「AWSでSIがもうからなくなる日」に向かってAWSは進化を続けている。憂鬱の色はSIベンダーのほうがより濃い。