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政府統計「失業率急低下」は本当なのか? エコノミストが検証

滅多に起きない極めて稀な出来事

失業率が急低下。インフレ率はどうか

3月2日に総務省が発表した1月の労働力調査では、完全失業率が2.4%と、2017年12月の2.7%から急低下した(失業率が前月から0.3%ポイントも低下するというのは滅多に起きるものではない)。

このところ、いわゆる「リフレ派界隈」では、多くの人が口をそろえたように、「日本のNAIRU(インフレ率を加速させない最低の失業率の水準)は2%台半ば程度」と言っていたので、「リフレ派信者」の中には、「いよいよ日銀が目標とする2%に向けてインフレ率が本格的に上昇し始める局面が来た」と喜んでいる方々もかなりいらっしゃるのではなかろうか。

ちなみに筆者は、やや定義は異なるが、「均衡状態(経済の需給ギャップがゼロ)」での失業率(均衡失業率)は2.1%と試算している(ご関心がある方は、2017年5月25日付の当コラム『日本経済は本当に「完全雇用」に近づいているのか?』をご参照いただきたい)。

とにかくNAIRUが2.1%であれ、2.5%近傍であれ、1月の失業率の数字だけをみれば、そろそろ日本のインフレ率の上昇局面を迎えてもいい頃合いだと考えるのは当然といえば当然である。

 

それでは、インフレ率の動向はどうだろうか。その前に最近のインフレ関連のメディア報道について気になっていることがあるので一言付け加えさせていただきたい。

一般的なインフレ指標は、消費者物価指数の(対前年比)上昇率であるが、筆者が最近の経済ニュースを目にする時に疑問なのは、いつの間にか、「生鮮食品とエネルギー価格を含む総合指数」が一般的なインフレ指標として用いられている点だ。

本来、インフレ率の趨勢をみる場合には、天候などの外部要因による変動が激しい食品やエネルギーを控除した「コア・コア消費者物価指数」をみるべきである。そして、実際にそのような問題意識から、総務省や日銀は、独自に計算した様々なインフレ指標を発表している。

だが、最近、メディアのニュースでは、コア・コア消費者物価指数の数字はほとんど見かけなくなり、食品やエネルギー価格を含む総合でインフレ率が上昇している点を強調することが多くなっている(そちらを用いたほうがよりデフレが解消している感が出る)。

筆者はその点についてはかなり強い違和感を持っているので、ここでは、あらためて「生鮮食品及びエネルギーを除く消費者物価指数」をみる。すると、1月は前年比+0.4%の上昇にとどまっている。

確かに上昇過程にはあるものの、上昇ペースは極めて緩やかであり、これまでのインフレ率の動きから「加速度的な上昇」が始まる気配は感じられない(日銀は「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」としてその他、様々なインフレ率指標を公表しているが、ほぼ同様の解釈が可能であると考える)。

急上昇する気配は、ない

このインフレ率の動きをどのように解釈するかは、今後の金融政策だけではなく、日本経済の行方を考える上でも極めて重要である。

もし、本当に失業率がNAIRU近傍まで低下しているのであれば、まもなくインフレ率は加速度的に上昇する可能性が高く、現在(1月)は「嵐の前の静けさ」なのかもしれない。そして、その場合、日銀による追加緩和は不要で当面はインフレ率の状況を見守るだけでよいということになる。

一方、何らかの理由で現状のペースでのインフレ率上昇が今後も続く場合、2019年にインフレ目標の2%に到達し、かつ、2%近傍で安定的に推移する可能性は極めて低い。すなわち、「2019年中の出口政策」の可能性は低いということになる。

もし、本当に日銀が2%のインフレ目標にコミットしている(しかも2019年中のどこかで出口政策を行うことに)のであれば、何らかの手段でインフレ率の上昇ペースをさらに引き上げていく必要がある(もし、何らかの「構造要因」でインフレ率が世界的に上昇しにくい時代に入り、せいぜい上昇しても1%近傍であるならば、2%の目標自体を変更しなければならない)。

ちなみに、より直近(週次で2月19日時点まで公表)のインフレ指標としては、2月中旬の東京都区部の消費者物価指数と一橋大学経済研究所の「経済社会リスク研究機構」が無料で公開している「SRI一橋大学消費者購買価格指数」があるが、どちらとも加速度的に上昇する気配は全くない。

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