「正社員」という言葉を一掃する改革が必要だ

 働き方改革の究極の目的が、安倍首相のいうように「非正規」を一掃することだとすれば、すべての非正規労働者を正社員(無期雇用)にするように規制すればよい。民主党政権の時代に、厚労省は契約社員を5年雇用したら正社員になれるように労働契約法を改正した。

 その結果起こったのは、非正規の雇い止めだ。規制が始まってから5年後の2018年3月末で、多くの契約社員が失業するだろう。非正規を規制強化することは、正社員の既得権を強化して労働者の格差を拡大するだけだ。

 そもそも正社員は幸福なのだろうか。国際的なアンケート調査では、日本の労働者は「いま働いている会社が嫌いだ」という回答の比率が主要国で最も高いのが通例だ。他の会社を選ぶ自由がないからだ。日本の労働生産性が低い原因も、正社員を長時間拘束する雇用慣行にある。

 今でも労使協定で残業は制限されているが、それを上回る「サービス残業」をするのは正社員だけだ。ここでは労働生産性は問題ではなく、みんなと一緒に残業して会社に対する忠誠心を見せ、長時間労働に耐えた者だけが出世競争に生き残るからだ。

 そういう働き方は、もう終わった。これからは工場やオフィスに集まって行う共同作業はコンピュータで置き換えられるので、人間は時間で計測できない非定型的なサービス労働に特化するしかない。

 だから長時間労働をなくすために必要なのは「非正規」を一掃することではなく、雇用規制を緩和して労働移動を自由にし、「正社員」を一掃することだ。定年まで勤務するサラリーマンだけが「正しい社員」だという通念をなくさない限り、いくら規制を強化してもサービス残業はなくならない。

 それは生産性向上のためだけではなく、労働者にとっても必要だ。彼らを時間で拘束されて時間で賃金をもらう労働から解放して裁量を拡大する改革は、労働者の自由のために必要なのだ。