日銀は異次元緩和の出口戦略を示すべきだ

対案を出せない野党と批判を恐れるマスコミ

2018年2月23日(金)

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日銀の黒田総裁は再任されることになったが、異次元緩和の出口戦略は未だ示していない(写真:ロイター/アフロ)

 2月16日、黒田東彦日銀総裁を再任させる人事案が国会に提出された。

 失業率は3%を割り、有効求人倍率も12月は1.59倍まで上昇している。景気拡大も、1965年11月から70年7月まで57カ月間続いた「いざなぎ景気」を超えた。安倍首相はこういった現状を踏まえ、黒田総裁について「手腕を信頼している」と繰り返し述べた。

 しかし、大きな問題がある。安倍首相は、2013年春からアベノミクス「3本の矢」、つまり大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略を打ち出しているが、財政が悪化の一途をたどっているということだ。

 中でも目玉は金融緩和だった。日銀は2013年4月に「異次元緩和」をスタートさせた。「物価目標2%」を掲げ、デフレ脱却に舵を切ったのである。

 ところが、その目標はいまだに達成できていない。それどころか、目標達成時期を6回も先送りしてきた。

 プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化についても、達成時期を先送りしている。内閣府は、2025年度に均衡させると試算していたが、2年遅れの2027年度にずれこむと発表した。実際は、達成の目途は立っていない。国の借金も1100兆円に迫っている。

 日銀は異次元緩和の実施により450兆円もの国債を抱えてしまったが、目標を達成できない上に出口が全く見えないのである。一体どうすればいいのか。

 これに対して、野党からはあまり批判の声が聞こえてこない。なぜかといえば、日本の政党は、経済政策の観点でいうとすべてがリベラルだからである。

 本コラム「消費税の引き上げなんてどうでもいいことだ」でも述べたが、欧米では、大半の国で「保守」と「リベラル」という二大政党がある。

 保守は、経済でいえば自由競争を促し、自国の利益を強く守る立場を取る。政府はあまり市場に介入せず、市場の競争原理を尊重する「小さな政府」となる。保守は財政再建、つまり財政の引き締めを図る。

 一方で、リベラルは格差をなくすために規制を設け、社会保障や社会福祉にお金を使う「大きな政府」を目指す。すると、財政赤字が膨らみ、次は保守が政権を取る。この二つの政党が交互に政権を担うことで、社会はバランスを保つのである。

 日本の場合、自民党は保守政党と言っているが、経済政策ではリベラルだ。野党の大半は、さらにリベラルだ。つまり日本の政界に保守という存在がほとんどないから、財政を引き締めようという議論が広がらない。だから、日本の借金はどんどんと膨れあがっているのである。

 日本では、「利益の分配」についてはどの政党も自分たちの働きを強調するが、「不利益の分配」には一斉に口をつぐむ。

 さらに言えば、日本のマスコミも総じてリベラルである。朝日新聞や毎日新聞はリベラルで、本来であれば読売新聞や産経新聞は保守の立場である。しかし、読売や産経は「安倍応援団」であるから、今は「財政を引き締めよ」と強く主張しない。例えば、消費増税の議論が持ち上がっても、ほとんどのマスコミは反対する。

 つまり、日本には、政界にもマスコミにも保守がほとんどいないのである。

コメント12件コメント/レビュー

>今、安倍政権に反対する者が誰もいない。「安倍一強」が依然として続いているのである。

「反対する者がいないのはおかしい、けしからん。」と、言いたい訳?(2018/02/23 09:41)

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「日銀は異次元緩和の出口戦略を示すべきだ」の著者

田原 総一朗

田原 総一朗(たはら・そういちろう)

ジャーナリスト

1934年滋賀県生まれ。早大文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経て、フリーランスのジャーナリストとして独立。「朝まで生テレビ!」「サンデープロジェクト」等のキャスターを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>今、安倍政権に反対する者が誰もいない。「安倍一強」が依然として続いているのである。

「反対する者がいないのはおかしい、けしからん。」と、言いたい訳?(2018/02/23 09:41)

元民進党がアベノミクス以上の政策を出せないのは、それをやろうとすると支持母体である連合の有り様を見直さなければならないから。

他の野党も、献金や票田を提供してくれる日本の経営者達にメスを入れないといけなくなるので、できない。

阿倍政権は、支持母体や支援者に大きな負担がでないよう、隙間を縫う形で非常に上手く調整をかけて政策を出している。

だから、アベノミクスで大きな成果が出ないんだけどね。(2018/02/23 09:03)

アベノミクス「3本の矢」大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略のうち
機動的な財政出動をほとんど行っていないのですから景気回復なんてするわけがない。
企業優遇して、消費税増税の悪手やってるのですから、批判するなら政府でしょ。

日銀は、日銀で出来る事をやってると思います。
金融緩和のみで景気回復すると考えてる方々も批判の先に加えてもいいかもしれませんね(2018/02/23 08:57)

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