鬼龍院 やっぱり大きかったのは露出ですね。もちろん事務所の人は「曲がよかったからだよ」と言ってくれるんですけど。あとはどれだけカラオケで歌えるかというのも重要だと思います。
『女々しくて』に関して他のミュージシャンの方が褒めてくれてすごく納得したのが「上手く歌えなくてもなんとかなる雰囲気が、すごくいいと思う」ってことなんですよ。
酔っ払って音をはずしても、歌詞を間違えても誰も怒らなさそうな曲じゃないですか。だからカラオケでリクエストしやすかったんじゃないかなって。
そういったいろんな要素がマッチしたんでしょうね。でも、狙ってヒットを出せるというのは、なかなかできることじゃないです。
――じゃあ、もし今、鬼龍院さんが当時の事務所の社長と同じ立場にいたと仮定して、「これはいい曲だ」と思える曲を作った新人アーティストを売り出そうとするならば、どういうことを考えますか?
鬼龍院 なるほど。新人アーティストで1曲、すごくいい曲があったらですね。まずやっておくのは、早めにメンバーを増やしておきますね。
――メンバーを増やす?
鬼龍院 その曲をたくさん露出させるのは、当然のことなんですよ。他に何ができるかというところで、たとえば僕は「おそ松さん」のアニメを見て考えたことがあって。
「おそ松さん」にファンが多いのって、あの6人にそれぞれキャラがあって、関係性ができあがっているから、男の子たちの関係性に萌えることができるからなんですよね。だからメンバーを増やすことでファンの間口が広がるという。
――露出というところに関してはどうでしょう?
鬼龍院 たとえばDVDを再生するときに、最初にどうしても飛ばせない部分ってあるじゃないですか。ああいうところで毎回曲が流れたら、きっとみんな覚えちゃうと思うんですよね。
そういう風に音楽が入り込める余地があるものって、世の中にいっぱいあると思うんですよ。たとえば駅の発着メロディも、ネーミングライツのようにお金で買われていくことになるかもしれない。たとえば新譜の発売日になったらその曲のサビのメロディが流れる、とか。
月曜日から毎日そのメロディが流れて、水曜にCDが発売になって、金曜の夜にMステに出るとか。そういう発想に気付けるかどうかだと思うんですよね。
あとは権利を守りすぎるがゆえに音楽を自由に使えなかったり、そういった堅苦しいことをしているとヒットも逃すと思います。
――最初に「音楽は宗教である」と仰っていましたが、鬼龍院さんはそういう風に引いた目で音楽を見ることができるドライさとフラットさがあるから、いろんな戦略やアイディアを楽しみながら生み出しているように見えます。
鬼龍院 もともと人がやってないことをやるのが大好きなんで。そういうことを企んで、いざ出したときにみんなが驚いてくれてるのは、すごく楽しいですね。それは生きがいかもしれない。
ただ、結局この手の話の結論として行きつくのが「音楽はわりと無力である」ということにもなるんですよ。
さっきのおそ松さんの話にしてもそうですけれど、そうやって消費してくれる人が一定数いるなら、音楽はどうでもよくなってくる。だから音楽は無力だと感じますし。
でも、いい曲がヒットにはなるのは間違いない。だから僕は、どっちもやろうぜって思うんです。
(了)
【新アルバム『キラーチューンしかねえよ』収録曲】