16年初頭、エアウィーヴ社は電通本社のなじみの担当者の紹介を受けて、世界にネットワークを構築する電通の子会社「電通イージス」とその子会社と、アメリカでのマス広告に関する契約を結ぶ。国内の広告業界のリーディングカンパニーという実績はもちろん、国際事業に自信を見せる電通の総合力に期待してのことだった。
マス広告の計画は次のようなものだったという。
リオ五輪は8月5日から21日までの17日間開催される。同社にとってもここが最大の商機となる。そのため、オリンピック前の5月には集客や通信販売の要となるイーコマース(EC)機能付きのウェブサイトをアメリカで立ち上げ、さらに7月からは大々的にウェブ広告を展開、リオ五輪で一気にエアウィーヴの浸透を図り、9月に売上の最大化を目指すことにした。
エアウィーヴ社にとって当初、計画にほころびは見当たらなかった。しかしフタを開けてみれば、全く予想外の事態に見舞われたのである。事情を知る関係者が言う。
「電通イージスが制作管理を請け負い、5月に完成するはずだったウェブサイトが、ECサイトとしての基本的な設計ミスが生じ、スクロールが極めて遅かったり、サイトが頻繁に落ちたりと操作性に様々な問題が噴出した。いわば、ほとんど使いものにならないサイトだったそうです。唖然としたエアウィーヴ社が急いで改良を指示しても、なかなかHPは完成せず、なんと8月に入ってリオ五輪がスタートしても、ホームページ完成が間に合わなかったのです。
電通の子会社に任せていてはことが進まないから、と最終的に9月にエアウィーヴ社が開発ソースコードなどを引き取り、別の制作会社に頼んで完成を急いだ。結局ホームページの完成は12月までずれ込んでしまったというのです」
販売の要となるウェブサイトがリオ五輪までに機能していなければ、計画の根幹が崩れてしまうのは当然だろう。
しかも想定外の事態はこれだけに留まらなかった。
「エアウィーヴ社はリオ五輪が開催中の8月に、電通の子会社を通じて前月比で10倍のウェブ広告を出稿した。にもかかわらず、売り上げはわずか1.5倍の伸びにとどまったのです。もちろん広告を打てば商品が売れる、とは限りませんが、それにしてもあまりに効果がなさすぎる。
なにかがおかしいと感じた同社が独自に調査した結果、関心の高い消費者に何度もアプローチするウェブ広告特有のリターゲティング広告の精度が著しく低かった可能性が浮かんできた。
さらに、アメリカの大手ECサイトへ出稿されるはずだった広告が、のちに出稿されていなかったことが発覚したと聞いています。これもまた、会長の怒りを買いました」(同前)