テレビを見ていれば、リクルートホールディングスに関連するテレビCMを目にしない日がないといっていいだろう。大物芸人の松本人志さんが様々な職業に扮する「タウンワーク」、緑色のふわふわしたキャラクター「スーモ」が登場する「SUUMO(スーモ)」、人気アイドルの「乃木坂46」のメンバーを多数起用した「じゃらん」などなど。CMの最後にはお馴染みのフレーズ「まだ、ここにない、出会い。」。多くの人はその映像をすぐにイメージできるだろう。
創業者の故・江副浩正氏が1960年に「大学新聞広告社」を立ち上げてから、まもなく「還暦」を迎えるリクルート。これまで数々のサービスを世に送り出し、成長させてきた。リクルートホールディングスの峰岸真澄社長は自社について「イノベーティブなサービスを生み出し続ける会社。企業の究極的な使命はイノベーションの創出に尽きる」と力説する。
イノベーションに関して、最も有名な考え方の一つが、米ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が提唱する「破壊的イノベーション」だろう。既存事業の秩序を破壊し、業界構造を劇的に転換させるイノベーションを意味し、大手企業の優位性を覆し、覇権を握るプレーヤーが交代する可能性を示している。
一方、破壊的イノベーションによって覇権を奪われる大手企業は、「イノベーションのジレンマ」に陥るとクリステンセン教授はいう。多くの優良企業は、顧客のニーズに応えて従来製品の改良を進める「持続的イノベーション」によって利益を創出していく。しかし、目の前の事業にのみ目を奪われることで、新しいニーズに気付かず、新興企業の新製品を軽視してしまう。
結果として、新興企業の製品の価値が広く市場に認められ、大手企業の既存製品を凌駕して成長していく。初期の段階で十分な対策を取れなかった大手企業の既存事業は陳腐化し、自らが築いてきた地位を失ってしまうというわけだ。
こうしたイノベーションのジレンマは、今や売上高2兆円に迫る大企業となったリクルートにも忍び寄る。
リクルートの足腰を支える多くの国内事業は、サービスの誕生からすでに10年、20年が経過したものが大半。開始時期は、じゃらんが1990年、ゼクシィは93年、タウンワークは98年。ブランドとしては2009年に始まったスーモも、1976年から続いてきた「住宅情報」などを統合したものだ。
さらに、リクルートは14年10月に株式を上場。安定して利益を上げ続けることが、これまで以上に求められる。そのためには、一定以上の規模を持つ既存事業について、現在の顧客ニーズを満たすことが近道ではある。しかし、これはイノベーションのジレンマに照らせば、持続的イノベーションそのものである。
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