この面倒な作業をスマートフォンで手軽にできるサービスが広がりはじめています。背景には、電子帳簿保存法の改正で、ことしから企業が領収書や請求書を紙ではなく、画像データで保存することが認められるようになったことがあります。経費精算を簡単にするサービスとはどんなものか? その効果のほどは?(経済部記者 野上大輔)
スマホ1つで終了!
経費精算を簡単にできるアプリの効果はどれほどのものか、導入した会社を訪ねてみました。外国人観光客にホテルを紹介したり、通信カードを貸し出したりする事業を行っている社員約30人のベンチャー企業「WAmazing」。
創業から1年ほどの会社ですが、事業の拡大とともに、毎月社員が増える繁盛ぶりで、本業に集中するためにも経費精算の業務を効率化したいと考えていました。
そこで、経費精算のアプリを導入。領収書をスマホのカメラで撮影すると、日付や支払い先、金額などを自動で読み取ります。購入した品目など必要な内容を付け足して、画像データとともに保存して登録すれば、申請は終了。
経費精算のためだけに、オフィスに立ち寄る必要がなくなりました。月末に集中していた申請が適度にばらけ、会社全体で経費の処理にかかっていた時間も5分の1に削減できたといいます。
ミスもスペースの問題も解消
“電子化”に踏み切る前は、多くの企業と同じように、社員がぞれぞれエクセルで書類を作り、経理担当者は提出された書類と領収書の原本を照合していました。
経理担当の青木里美さんは「どうしても間違いが多くて、社員に不備の連絡をしたり、差し戻しをしたりすることもたびたびだった」と打ち明けてくれました。
また、レシートや領収書をA4の用紙に貼り付けて保管していたため、瞬く間にファイルが増えていき、置き場所にも困っていました。経費精算を電子化したことによって、申請ミスやスペースの確保に悩まされることがなくなるといいます。
WAmazingの加藤史子代表は「人と予算に限りがあるベンチャー企業は、製品を出すことに集中したい。社員に1時間の余裕があれば、企画書が書けるし、技術者ならプログラミング、営業ならお客様と話ができる。バックオフィスの作業時間の短縮は、事業にそのまま跳ね返ってくる」と話しています。
電車賃 乗るだけでOK
この経費精算のアプリを開発したのは、家計簿アプリを手がける「マネーフォワード」。去年、企業向けにサービスを始めましたが、ことしに入って、急速に受注が増えているといいます。
大きな特徴は電車賃の申請が簡単にできることです。スイカやパスモといった鉄道系のICカードで自動改札を通れば、その使用履歴がアプリに蓄積されます。そこから、業務として乗車した分だけを選んで登録すれば申請は終了です。
国内の航空会社とも連携。搭乗記録がアプリに送られ、そのデータを会社の経理に送れば、同じく申請は終了です。
事業責任者の今井義人さんは「まだサービスを始めたばかりで過渡期だが、将来的には、経費精算業務そのものをなくして、お客様により創造的な仕事をしていただくことを目指す。レシートの読み取りは、AI=人工知能の技術で画像認識の精度を一段と高めていきたい」と話しています。
“コスト削減効果 1兆9000億円”
アメリカのIT企業「コンカー」は、日本のすべての企業が経費精算の業務を電子化することで、1兆9000億円のコストが削減できるという試算をまとめました。法改正を追い風に、スマホで経費精算ができるサービスが登場しはじめているのです。
働き方改革 生産性の向上にも
面倒でミスも起きがちな経費精算を効率化できれば、社員の働き方改革につながり、企業にとっても、人材を会社の成長につながる仕事に配分できます。
インターネットを通じてデータをやり取りする以上、セキュリティーをいかに確保するかは重要な課題です。ただ、人手不足もあいまって、生産性の向上が企業にとってより重要なテーマとなっているだけに、経費精算の「電子化、ペーパーレス化」の動きは一段と加速しそうだと、今回の取材で強く感じました。
- 経済部記者
- 野上大輔
- 平成22年入局 横浜市出身
金沢局を経て
現在、情報通信業界を担当