原発避難者訴訟 東電に賠償命令 国の責任は認めず
裁判では、国と東京電力が大規模な津波を事前に予測して被害を防ぐことができたかどうかや、東京電力が避難した人たちに支払っている慰謝料の額が妥当かどうかが争われました。
判決で千葉地方裁判所の阪本勝裁判長は「国は遅くとも平成18年までには福島第一原発の敷地を超える高さの津波が起きる可能性を予測できたが対策を講じても事故は避けられなかった可能性がある」として国の責任は認めず国への訴えは退けました。
東京電力については「津波対策を完全に放置したとまでは言えず、重大な過失があったということはできない」と指摘しました。
一方で「住民がこれまでの暮らしやコミュニティーを失った精神的苦痛は事故と関係があり、東京電力が賠償すべきだ」などとして、原告のうち42人に総額3億7600万円余りを賠償するよう命じる判決を言い渡しました。
このうち原告30人余りについては国の指針などに基づく慰謝料に加えて1人当たり最大で1000万円の増額を認めました。
また避難区域ではない地域から自主的に避難した1世帯4人についても個々の具体的な事情に応じて賠償の対象となるとして、1人当たり30万円の慰謝料を認めました。
原発事故をめぐって全国の18の都道府県で1万2000人余りが起こしている集団訴訟では2例目の判決で、国と東京電力の責任を初めて認めたことし3月の前橋地方裁判所の判断とは異なり、国の責任を認めませんでした。
原告団「到底納得できず控訴」
原告の弁護団の事務局長を務める滝沢信弁護士は「千葉地裁は原発事故について国の責任を認めていないので不当判決だと思う。私たちも原告の人たちも到底納得できないので控訴します」と話しました。
原告の代表の遠藤行雄さんは「まさかこういう判決になるとは思っていませんでした。これでは終われないので改めて頑張っていきたい」と話しています。
東京電力「判決内容精査し対応検討」
原子力規制庁「原発審査 厳格に進める」
前橋地裁の判断との違い
前橋と千葉の地方裁判所で起こされた2つの集団訴訟では、東京電力に対する国の規制の在り方が適切だったのかが争われ、ことし3月の前橋地方裁判所の判決では「国は福島第一原発の敷地の高さを超える津波を事前に予測することが可能だった。東京電力に対策を命じていれば事故を防ぐことができた」として国の責任を認めました。
千葉地方裁判所の判決では「事前に津波を予測することは可能だったが、国や電力会社が投資できる資金や人材は限られ、すべてのリスクに対応することは現実的には不可能だった。仮に対策をとっていたとしても、東日本大震災の津波の規模から考えると事故は避けられなかった可能性がある」として国の責任は認めませんでした。
東京電力の責任についても判断が分かれました。
前橋地方裁判所は東京電力の津波対策について「常に安全側に立った対策をとらなければならないのに経済的な合理性を優先させたと言われてもやむをえない対応で、今回の事故の発生に関して特に非難するに値する」と厳しく指摘しました。
千葉地方裁判所は、東京電力が事故の前、想定される津波の検討を土木学会に依頼していたことなどから「津波対策を完全に放置したとまでは言えず、重大な過失があったということはできない」としました。
原発事故をめぐる集団訴訟は前橋と千葉を含めて全国18の地方裁判所で起こされ、今回の判決が今後の裁判に影響を与える可能性があります。
国の指針以上の慰謝料認める
原発事故の避難区域などから避難した人には国の指針に基づき一定の慰謝料が支払われてきましたが、原告側は「原発事故によって、一人一人の人格を育んできた自然環境や文化環境の中での暮らしや地域の人と人とのつながりなどが失われ、生涯にわたって続く精神的な苦痛を受けた」と主張し、さらに『ふるさと喪失慰謝料』として1人当たり2000万円を求めていました。
22日の判決では「長年住み慣れた家や地域での生活の断念を余儀なくされたことによる精神的苦痛は、避難生活に伴う慰謝料では補填(ほてん)しきれないもので、原発事故と関係がある損害として賠償の対象となる」として、原告のうち30人余りについて50万円から1000万円の慰謝料を認めました。
自主的に避難した人の慰謝料についても個々の具体的な事情に応じて賠償の対象となるとして、自主避難した1世帯4人について1人当たり30万円の慰謝料が認められました。
専門家「損害広く認めた」
大坂教授は、原告側が求めていた「ふるさとの喪失」に対する慰謝料が認められたことを挙げ「事故が起きる前の生活や地域のつきあいを失ったことなど東京電力がこれまでの賠償で認めてこなかったことも損害と認めていて、今後の集団訴訟に大きな影響を与える可能性がある」と指摘しています。
また自主的に避難した人にも賠償が認められたことについては「今回は避難したことに合理性があれば賠償を認めるという判断を示していて、個別の事情を考慮した判決で評価できる」と話していました。
そして事故の責任について前橋地方裁判所と判断が分かれたことについては「今年度中に各地で集団訴訟の判決が言い渡される予定で、その判断が注目される」と話していました。
各地で訴訟 来月は福島で判決
6年前の福島第一原発の事故のあと、東京電力は国の指針に基づいて福島県に住む人や県外に避難した人に賠償を行っていますが、事故の責任を問うために裁判を起こす動きが広がっています。
件数はしだいに増え、国や弁護団などによりますと、全国の少なくとも18の都道府県で31件の裁判が起こされ、原告は1万2000人余りに上っています。
国や東京電力は「事故を予測することはできなかった」などとして争っています。
ことし3月には集団訴訟で初の判決が前橋地方裁判所で言い渡され「国と東京電力は津波を事前に予測して事故を防ぐことができた」として3800万円余りの賠償を命じました。この判決に対しては双方が控訴し、東京高等裁判所で改めて審理されます。
一連の集団訴訟では来月、全国で最も多いおよそ4000人が原告となり、「生業訴訟」と呼ばれる裁判で、福島地方裁判所が判決を言い渡します。
この裁判では国と東京電力に対して、千葉の裁判と同じようにふるさとでの暮らしを失ったことに対する慰謝料などを求めているほか、放射線量を事故の前の状態に戻すことも求めていて、裁判所の判断が注目されます。
この裁判の原告団の馬奈木厳太郎弁護士は22日の判決について「追加の賠償を認め、今の救済の在り方は不十分だと判断した点は当然とはいえ評価できる」と述べました。
一方で国の責任が認められなかったことについては「国は津波を予見できたにもかかわらず万が一にも事故を防ぐための努力をしなかったことを許容した判決で極めて不当だ」と強く批判しています。
争点1 津波予測し被害防げたか
原告側は、国と東京電力は遅くとも平成18年までに福島第一原発の敷地の高さを超える津波が来ることを予測できたと主張しています。
その根拠として、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が発表した「長期評価」では、三陸沖から房総沖にかけてマグニチュード8クラスの巨大地震が、30年以内に20%の確率で起きることが示されていたとしています。
さらに平成18年に当時の原子力安全・保安院や電力会社が参加した勉強会で、福島第一原発については、高さ14メートルを超える津波が来た場合、すべての電源を喪失する危険性があると示されていたとしています。
原告側は、東京電力はこうした予測に基づいて非常用電源設備を高台に移すなど、必要な対策をとらなかった過失があると主張しています。
また、国は東京電力に対し原発事故を防ぐ対策を義務づけるべきだったとしています。
一方、国と東京電力は「『長期評価』は科学的な考えとして確立したものではなく、大規模な津波は予測できなかった」と主張しています。
そのうえで東京電力は、実際の津波は平成18年の試算より非常に大きいもので、試算に基づいて対策をしていても事故は防げなかったとしています。
国は、原発事故の前まで過酷事故対策は法律による規制の対象外で、対策を義務づける権限はなかったとしています。
争点2 「ふるさと喪失慰謝料」認められるか
原告側は、原発事故によって、一人一人の人格を育んできた自然環境や文化環境の中での暮らしや、地域の人と人とのつながりなどが失われ、生涯にわたって続く精神的な苦痛を受けたと主張しています。
そのうえで避難生活に伴う慰謝料とは別に「ふるさと喪失慰謝料」として原告1人につき2000万円を求めています。
これについて国と東京電力は、原告側が主張する「ふるさと喪失慰謝料」は、原発事故について国の審査会が示した指針で賠償の対象となっている精神的損害に含まれているため、その範囲を超える慰謝料は認められないなどと主張しています。
原発避難者訴訟 東電に賠償命令 国の責任は認めず
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、千葉県に避難した45人が生活の基盤を失うなど精神的な苦痛を受けたと訴えた裁判で、千葉地方裁判所は東京電力に対して、原告のうち42人に総額3億7600万円余りを賠償するよう命じる判決を言い渡しました。一方、国への訴えは退けました。
この裁判は、原発事故の避難区域や福島県のそのほかの地域から千葉県に避難した18世帯45人が、住み慣れた家や仕事を失い、ふるさとでの生活が奪われたとして、国と東京電力に総額28億円余りの慰謝料などを求めたものです。
裁判では、国と東京電力が大規模な津波を事前に予測して被害を防ぐことができたかどうかや、東京電力が避難した人たちに支払っている慰謝料の額が妥当かどうかが争われました。
判決で千葉地方裁判所の阪本勝裁判長は「国は遅くとも平成18年までには福島第一原発の敷地を超える高さの津波が起きる可能性を予測できたが対策を講じても事故は避けられなかった可能性がある」として国の責任は認めず国への訴えは退けました。
東京電力については「津波対策を完全に放置したとまでは言えず、重大な過失があったということはできない」と指摘しました。
一方で「住民がこれまでの暮らしやコミュニティーを失った精神的苦痛は事故と関係があり、東京電力が賠償すべきだ」などとして、原告のうち42人に総額3億7600万円余りを賠償するよう命じる判決を言い渡しました。
このうち原告30人余りについては国の指針などに基づく慰謝料に加えて1人当たり最大で1000万円の増額を認めました。
また避難区域ではない地域から自主的に避難した1世帯4人についても個々の具体的な事情に応じて賠償の対象となるとして、1人当たり30万円の慰謝料を認めました。
原発事故をめぐって全国の18の都道府県で1万2000人余りが起こしている集団訴訟では2例目の判決で、国と東京電力の責任を初めて認めたことし3月の前橋地方裁判所の判断とは異なり、国の責任を認めませんでした。
原告団「到底納得できず控訴」
原告の弁護団の事務局長を務める滝沢信弁護士は「千葉地裁は原発事故について国の責任を認めていないので不当判決だと思う。私たちも原告の人たちも到底納得できないので控訴します」と話しました。
原告の代表の遠藤行雄さんは「まさかこういう判決になるとは思っていませんでした。これでは終われないので改めて頑張っていきたい」と話しています。
東京電力「判決内容精査し対応検討」
原子力規制庁「原発審査 厳格に進める」
前橋地裁の判断との違い
前橋と千葉の地方裁判所で起こされた2つの集団訴訟では、東京電力に対する国の規制の在り方が適切だったのかが争われ、ことし3月の前橋地方裁判所の判決では「国は福島第一原発の敷地の高さを超える津波を事前に予測することが可能だった。東京電力に対策を命じていれば事故を防ぐことができた」として国の責任を認めました。
千葉地方裁判所の判決では「事前に津波を予測することは可能だったが、国や電力会社が投資できる資金や人材は限られ、すべてのリスクに対応することは現実的には不可能だった。仮に対策をとっていたとしても、東日本大震災の津波の規模から考えると事故は避けられなかった可能性がある」として国の責任は認めませんでした。
東京電力の責任についても判断が分かれました。
前橋地方裁判所は東京電力の津波対策について「常に安全側に立った対策をとらなければならないのに経済的な合理性を優先させたと言われてもやむをえない対応で、今回の事故の発生に関して特に非難するに値する」と厳しく指摘しました。
千葉地方裁判所は、東京電力が事故の前、想定される津波の検討を土木学会に依頼していたことなどから「津波対策を完全に放置したとまでは言えず、重大な過失があったということはできない」としました。
原発事故をめぐる集団訴訟は前橋と千葉を含めて全国18の地方裁判所で起こされ、今回の判決が今後の裁判に影響を与える可能性があります。
国の指針以上の慰謝料認める
原発事故の避難区域などから避難した人には国の指針に基づき一定の慰謝料が支払われてきましたが、原告側は「原発事故によって、一人一人の人格を育んできた自然環境や文化環境の中での暮らしや地域の人と人とのつながりなどが失われ、生涯にわたって続く精神的な苦痛を受けた」と主張し、さらに『ふるさと喪失慰謝料』として1人当たり2000万円を求めていました。
22日の判決では「長年住み慣れた家や地域での生活の断念を余儀なくされたことによる精神的苦痛は、避難生活に伴う慰謝料では補填(ほてん)しきれないもので、原発事故と関係がある損害として賠償の対象となる」として、原告のうち30人余りについて50万円から1000万円の慰謝料を認めました。
自主的に避難した人の慰謝料についても個々の具体的な事情に応じて賠償の対象となるとして、自主避難した1世帯4人について1人当たり30万円の慰謝料が認められました。
専門家「損害広く認めた」
大坂教授は、原告側が求めていた「ふるさとの喪失」に対する慰謝料が認められたことを挙げ「事故が起きる前の生活や地域のつきあいを失ったことなど東京電力がこれまでの賠償で認めてこなかったことも損害と認めていて、今後の集団訴訟に大きな影響を与える可能性がある」と指摘しています。
また自主的に避難した人にも賠償が認められたことについては「今回は避難したことに合理性があれば賠償を認めるという判断を示していて、個別の事情を考慮した判決で評価できる」と話していました。
そして事故の責任について前橋地方裁判所と判断が分かれたことについては「今年度中に各地で集団訴訟の判決が言い渡される予定で、その判断が注目される」と話していました。
各地で訴訟 来月は福島で判決
6年前の福島第一原発の事故のあと、東京電力は国の指針に基づいて福島県に住む人や県外に避難した人に賠償を行っていますが、事故の責任を問うために裁判を起こす動きが広がっています。
件数はしだいに増え、国や弁護団などによりますと、全国の少なくとも18の都道府県で31件の裁判が起こされ、原告は1万2000人余りに上っています。
国や東京電力は「事故を予測することはできなかった」などとして争っています。
ことし3月には集団訴訟で初の判決が前橋地方裁判所で言い渡され「国と東京電力は津波を事前に予測して事故を防ぐことができた」として3800万円余りの賠償を命じました。この判決に対しては双方が控訴し、東京高等裁判所で改めて審理されます。
一連の集団訴訟では来月、全国で最も多いおよそ4000人が原告となり、「生業訴訟」と呼ばれる裁判で、福島地方裁判所が判決を言い渡します。
この裁判では国と東京電力に対して、千葉の裁判と同じようにふるさとでの暮らしを失ったことに対する慰謝料などを求めているほか、放射線量を事故の前の状態に戻すことも求めていて、裁判所の判断が注目されます。
この裁判の原告団の馬奈木厳太郎弁護士は22日の判決について「追加の賠償を認め、今の救済の在り方は不十分だと判断した点は当然とはいえ評価できる」と述べました。
一方で国の責任が認められなかったことについては「国は津波を予見できたにもかかわらず万が一にも事故を防ぐための努力をしなかったことを許容した判決で極めて不当だ」と強く批判しています。
争点1 津波予測し被害防げたか
原告側は、国と東京電力は遅くとも平成18年までに福島第一原発の敷地の高さを超える津波が来ることを予測できたと主張しています。
その根拠として、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が発表した「長期評価」では、三陸沖から房総沖にかけてマグニチュード8クラスの巨大地震が、30年以内に20%の確率で起きることが示されていたとしています。
さらに平成18年に当時の原子力安全・保安院や電力会社が参加した勉強会で、福島第一原発については、高さ14メートルを超える津波が来た場合、すべての電源を喪失する危険性があると示されていたとしています。
原告側は、東京電力はこうした予測に基づいて非常用電源設備を高台に移すなど、必要な対策をとらなかった過失があると主張しています。
また、国は東京電力に対し原発事故を防ぐ対策を義務づけるべきだったとしています。
一方、国と東京電力は「『長期評価』は科学的な考えとして確立したものではなく、大規模な津波は予測できなかった」と主張しています。
そのうえで東京電力は、実際の津波は平成18年の試算より非常に大きいもので、試算に基づいて対策をしていても事故は防げなかったとしています。
国は、原発事故の前まで過酷事故対策は法律による規制の対象外で、対策を義務づける権限はなかったとしています。
争点2 「ふるさと喪失慰謝料」認められるか
原告側は、原発事故によって、一人一人の人格を育んできた自然環境や文化環境の中での暮らしや、地域の人と人とのつながりなどが失われ、生涯にわたって続く精神的な苦痛を受けたと主張しています。
そのうえで避難生活に伴う慰謝料とは別に「ふるさと喪失慰謝料」として原告1人につき2000万円を求めています。
これについて国と東京電力は、原告側が主張する「ふるさと喪失慰謝料」は、原発事故について国の審査会が示した指針で賠償の対象となっている精神的損害に含まれているため、その範囲を超える慰謝料は認められないなどと主張しています。